これってマイクロアグレッション?
広告
「ザ・ドラえもんズ」をご存じだろうか。その名の通り、ドラえもんの仲間たちだ。1996年に制作された映画「ドラミ&ドラえもんズ ロボット学校七不思議!?」でメインデビューしたキャラクターで、ロボット養成学校でともに学んだ親友同士である。
メンバーは、日本に暮らすドラえもん、アメリカのドラ・ザ・キッド、中国のワンドラ、ブラジルのドラリーニョ、ロシアのドラニコフ、スペインのエル・マタドーラ、サウジアラビアのドラメッド三世。
私は昔からドラえもんが大好きで、この映画が放映された時はちょうど小学1年生だった。ビデオテープを買ってもらっては夢中になって何度も何度も見返した。それぞれに個性が際立っていて、心優しく楽しい仲間たち。
しかし数年前にマイクロアグレッションという言葉を知って、ふと「ザ・ドラえもんズ」のことを思い出し、純粋に楽しめていた頃とは見方が変わってしまったことに気がついて驚いた。
マイクロアグレッションとは、社会で広く浸透している人種やその他マイノリティ集団に対するステレオタイプや偏見、それらに基づく期待などがベースとなって無意識に発せられるメッセージのことだ。ヘイトスピーチのような露骨な差別に比べて認識しにくく、ゆえにマイクロアグレッションを受けた当事者も混乱してしまったり指摘しづらいという特徴がある。
ドラえもんズのメンバーたちは、その国々を連想させるような見た目をしており、それぞれの特徴も少し大げさに付与されている。
例えば、アメリカのドラ・ザ・キッドはカウボーイの恰好をしており、短気がゆえにすぐ銃をぶっぱなす。中国のワンドラは生真面目な性格。カンフーの達人だが、女の子の前では固まってしまって何もできない。ブラジルのドラリーニョはサッカーがずば抜けて上手な代わりに、普段はどこか抜けているキャラとして描かれる。ロシアのドラニコフは無口でミステリアス、月を見るとオオカミに変身する…。
「これってマイクロアグレッション的な表現?」―。基本的にはみな好ましいキャラとして描かれているが、ちょっとしたところで特定の国のイメージを不用意に強調したり、誤解を生むきっかけになったりしないかと感じたのである。
少し大げさに捉えすぎなのだろうかと「ザ・ドラえもんズ マイクロアグレッション」で検索してみたが、似たようなことを書いている人は見当たらなかった。しかし念のため、と思い「ザ・ドラえもんズ 偏見」でTwitter(現X)検索してみると、私と似たようなことを考えている人がちらほら目につくのだった。もうしばらくこのキャラクターたちを見ないようになったのも、そうして時代とともに制作側の価値観や意識が変わっていることの表れなのだろうか。(理)