“黒岩知事、聞いてください” ―補助金支給再開を求め、神奈川朝高3年生がアピール
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24人の生徒が県知事に手紙
神奈川朝鮮中高級学校の高級部3年生たちが2月26日、神奈川県が2016年から停止している補助金の支給再開を求め、1時間にわたって横浜市の神奈川県庁前でアピールを行った。3月3日に同校を卒業する24人の生徒たちは、この日のために一人ひとりが黒岩祐治神奈川県知事あての手紙を書き、思いのたけをぶつけていた。
県の補助金が停止されたのは、高3生徒たちが初級部5年の時。マイクを握った金晟真さんが語る。
「先輩たちの代から今まで僕たちは声をあげ続けてきたが、最後までこの不当な差別に変化はありませんでした。
先日、すぐ近くにある大さん橋国際客船ターミナルで、神奈川朝鮮中高級学校美術部の展示を行いました。 人がお互いに認め合う社会が築かれることを願って、そして作品を通して僕たちの声が届くことを願って、『声明』という展示名をつけました。
そこでは、僕たちの作品や存在に興味を持ってくれた方が多く、在日朝鮮人を知ろうとする方々ともたくさん出会い、神奈川県が掲げる多文化共生社会の実現を実感しました。
…その反面、僕たち在日朝鮮人が学ぶ場である朝鮮学校にだけ補助金を支給しないという不当な差別を続けている。
この矛盾に、僕は怒りをおさえられません。
本来なら、県の中心であるあなたたちが、私たちに教育を保障する責任がある。歴史を認め、その教訓を生かしていない。
これからを生きる後輩たちのために、そして民族の尊厳を守るために、私たちはこれからもこの不当な差別がなくなるまでここに立ち続けます」
黒岩知事は答えて
アピール後には高3代表の金昌希さん、神奈川中高のオモニ会の安文華会長、神奈川県オモニ会連絡会の孔連順顧問、神奈川ネットワーク運動の竹中真美さんをはじめとする代表が県庁内に赴き、黒岩知事宛ての手紙を県職員に手渡した。福祉子どもみらい局子どもみらい部私学振興課の工史雄副課長、政策局の関根正明調整監が同席した。
神奈川中高教員の崔哲碩さん(28)は、「生徒たちがこのような闘争の場、権利を勝ち取る場に来ていること自体が、日本の高校生ではあり得ないことだ。朝鮮学校の生徒たちはいろんなものを犠牲にしている。青春時代の重要な時間を割いていることが、ものすごく悔しい。それでも、なぜ生徒たちはこの場に来るのか。それは、かれら自身が自分たちはどういう存在なのかを知っているからで、補助金制度から除外されていることに対して悔しいし、悲しいし、憤りを感じているからだ。在日朝鮮人という歴史的特殊性から見ても(補助金の不支給は)おかしいし、普遍的価値から考えてもおかしい」と生徒たちの気持ちを代弁した。
オモニ会の安文華会長(48)は、「私たちは補助金が出されるまで来ます」と県職員の目をしっかり見据ながら断言。「生徒たちの手紙を読んで、黒岩知事が何を感じられ、何を考えたのか―。次に来た時に必ず教えていただきたい。私たちはずっと訴えてきましたが、一方通行なのです」と強く訴えた。
神奈川県は、2014年度に外国人学校に通う児童生徒の学費支援制度を始め、当初は5校の朝鮮学校の保護者に支給したものの16年度から停止。理由は、「日本人拉致問題を教えていない」とのことだった。補助金制度は県内の外国人学校に適用されているが、教育内容を支給の「条件」にしているのは朝鮮学校だけだ。
一方、神奈川県弁護士会は18年11月14日、「不合理な差別的取り扱いで生徒の人権を侵害し、憲法や国際人権条約に保障される平等原則に反する」と黒岩祐二県知事に改善を「警告」しているが無視されている。
神奈川県では2019年3月から県庁前での「月曜行動」が毎月第1月曜日に行われてきた。継続の力で日本人の支援者の輪は広がり、この日も約40人の同胞と日本市民たちが生徒たちのアピールを見守った。3月からは県知事との面談を求め、引き続きアピールを続けていく。(文・写真:張慧純)