26回目を迎えた兵庫県朝鮮学校校医会
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3月28日、第26回兵庫県朝鮮学校保健校医会に(鳳)さんと参加してきました。会議は2時間半、同胞医療人の熱い思いに触れることができました。
イオ編集部では、今年はじめから朝鮮学校における「学校保健」の現状を調べています。
日本の学校には、当然のように保健室があり、養護教諭やスクールカウンセラーもいますが、朝鮮学校をはじめとする外国人学校は日本の学校教育法上「各種学校」(美容学校や自動車学校と同じ位置付け)ということで、健診も自費、保健室も養護教諭もいない学校が大半です。
しかし、子どもたちの育ちを考えたとき、体が健康かどうかを調べる健診を定期的に受けられないなんて、あってはならないことだし、
ケガをした時に手当を受けるということは、あたりまえのことです。
しかし、このあたりまえが、あたりまえでないというのが現実。
朝鮮学校ではこの必要性に目を向けた同胞医療人が、手弁当で学校保健を担ってきた長い歴史があります。
さらに最近では、日本各地の朝鮮学校で保健室設置の取り組みが進んでいます。
背景には、新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウン、つまり学校現場で休校措置が取られたことによって、子どもたちの心が「しんどさ」を抱えるようになったことが大きいと聞きます。
なかには「不登校」という形で学校から足が遠のく児童生徒たちも増えています。そのケアを担っているのが学校現場の教職員であり、教職員たちを支える専門家たち。そのネットワーキングを担っているのが在日本朝鮮人医学協会(以下、医協)なのです。
3月28日の兵庫県校医会では、養護教諭の徐千夏さん(尼崎朝鮮初中級学校、神戸朝鮮初中級学校保健室)が、保健担当教員会議の取り組みについて報告されました。
兵庫県では、医協西日本本部兵庫支部が1978年に結成された12年後の1990年に学校保健委員会(現在は保健担当教員会議)が発足。93年に「保健だより」の発行がはじまり、98年3月には兵庫県朝鮮学校保健校医会が発足されました。同年5月から県下の学校で性教育の授業が始まったそうです(初級部5年生以上)。
徐さんは、2012年までの14年間で、教務主任や体育担当教員が同会議に招集され、流行している病気の統計を取ったり、健康診断を体系的に進めるために学校健診指導要領の作成、感染症対策が講じられてきたと話してくれました。
また、徐先生は、コロナ禍におけるロックダウンによる子どもたちへの影響ははかり知れず、対人関係で問題を抱えやすい子、うまく自己処理できない子どもたちが増えていること、
保護者との対話、生徒たちへの個別ケア、クラス担任や授業の準備など、教員たちの業務がさらに増えていることに胸を痛めながら、「大人のメンタルケアにも注力し、日ごろから声をかけるよう努めている」と話されました。
県下の同胞医療人たちの協力によって、2017年度から兵庫県下の中級部1年生を対象にモアレ検査(脊柱側弯症検診)を始めたこと、15年度から毎年、学校内で起きるケガ、事故の報告書を作成し、データの記録分析、事故の予防といった対策を立てていったことも報告、盛りだくさんの発表を終えられました。
今年10年を迎える学生家庭相談室の活動も紹介されました。
※2022年6月号の本誌特集「弱った心の見つめ方」で精神保健指定医の高富栄さんに原稿を書いていただきました。
https://www.io-web.net/2022/06/kokorotokusyu/
2022年4月に生まれた西神戸朝鮮初級学校を支援するポムポムパラム(봄봄바람)の実践も目を見張るものでした。同胞公認心理師、臨床心理士たちが西神戸初級を訪れ、子どもや教員たちを支援した回数はなんと68回! 教職員たちを集めた「学びのシェア会」も行っています。
姜京富さん(神戸朝鮮高級学校校医、内科医)、高富栄さん(児童精神科医)をはじめとする医療人たちの思い、 医協を背景にしたチーム力が子どもたちの心身を守っている―。
校医会の取材は初めてでしたが、今学校で何が起きていて、子どもたちや教職員がどんな支援を求めているのかが、鮮明に立ちあがってくるようでした。
詳しくは学校現場への取材を続け、夏から始まる連載で書きたいと思っています。(瑛)