「こども基本法」テーマに勉強会/川崎・補助金支給再開を求め
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「こども基本法と子どもの人権保障」をテーマにした勉強会が4月9日、鶴見朝鮮初級学校(横浜市鶴見区)で行われ、神奈川県議や横浜、川崎の市議会議員、日本市民たち約20人が参加した。神奈川県や東京都では、外国人学校のなかで唯一朝鮮学校だけが補助金支給の対象から外されている。勉強会を主催したのは「朝鮮学校への補助金再開のための学習会実行委員会」で、「こども基本法」に定められた「子どもの最善の利益」の観点からこの問題を考えようと開催された。23年12月に続き今回が2回目。
東京都では、「こども基本法」に先立ち、2021年に「こども基本条例」が制定されたものの、2010年から都内の朝鮮学校の補助金は停止されたままだ。また神奈川県では、黒岩県知事が日本人拉致問題を教科書に載せていないとの言いがかりをつけ、2016年から県下朝鮮学校への学費補助を止めている。横浜市、川崎市も県にならい補助金の額を減らし、県下4つの朝鮮学校が打撃を受けている。
講師は、東京無償化裁判で東京朝鮮中高級学校生の弁護に立った松原拓郎弁護士(井の頭法律事務所)が務めた。
松原弁護士は、日本が1994年に国連「子どもの権利条約」を批准した後、同条約の審査機関から日本政府に対し、同条約の原則と規定が国内法に反映されていないことへの懸念が示され、たびたび勧告を受けてきたにもかかわらず、国政レベルの対応が進まず、現場の声や専門性が反映された政策が不足してきた、遅きに失した感はあるものの、23年4月に「こども基本法」が施行されたことは「画期的で意義深い」と意義づけた。
とくに、「こども基本法」が、国連「子どもの権利条約」の精神にのっとり、こどもを「権利を持つ主体」と位置づけている点を強調しつつ、「最優先に考慮するべきは、子どもの最善の利益であり、生存・発達権、最善の利益、意見表明権、差別禁止が4つの原則だ」とした。また、日本各地の自治体で「こども条例」が制定され続けていると伝えながら、全体的な傾向について解説した。
松原弁護士は、都が朝鮮学校への補助金を停止している問題について、同条約の審査機関である、「子どもの権利委員会」が総括所見などを通じてたびたび懸念を表明してきたことを想起しつつ、都が「都民の理解が得られない」との口実をあげて補助金を支給していないことは、「こども基本条例」の制定によって「その根拠を失った」と指摘。都はすべての子どもが誰一人取り残されることなく、すこやかに育っていく環境を整える「義務に負うようになった」とのべた。また、「予算措置を講じられるのに補助金を停止したことは許されない」とも話した。
さらに、都条例の最大の問題は、第三者機関が設置されず、条例の実効性が確保されないことだと指摘しつつ、日本が国連の個人通報制度を留保していることも条約批准後の約20年間、同条約の実効性が日本で確保されない一因だと分析した。
参加した県会議員は、「今までも平等や差別の観点で補助金の支給再開を当局に求めてきたが、すべての子どもにという観点から大きな展望をもらった。県民の理解を得られないとの理由から補助金を出さなかった県知事の対応が、子どもの権利の侵害にあたるということ、こども条例が子どもの最善の利益を実現するための武器になるという点も参考になった」と話していた。(瑛)