「育児は楽しいものでなくてもよいし、仕事の役に立たなくてもよい」
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この連休中に、わけあって男性の育児に関する問題を論じた本を何冊か読み直した。
『「イクメン」を疑え!』(関口洋平著、集英社、2023年)
著者は米国研究が専門の学者。とくに、米国文化における家族の表象について研究している。本書は「イクメン」という事象を、米国の保育事情や男性の育児をテーマにした映画や文学作品を題材として、文化的な側面から読み解いている。取り上げられている作品は、『クレイマー、クレイマー』『ミセス・ダウト』『幸せのちから』『なずな』など。
本書で著者は、イクメンに関する言説が新自由主義と手を組んで「男性の育児」をあくまでビジネス的な観点から評価し「女性の育児」と区別している事実に迫るなど、「イクメン」という言葉が新自由主義的な価値観で使われてきたことを批判的に論じている。
「育児は人的資本の一部ではなく、地域をよりよくケアし、他者とつながるための第一歩なのだ。社会がなければ育児はできないし、育児ができなければ社会は存在しない」
「育児は楽しいものでなくてもよい。仕事の役に立たなくてもよい。そして男性がひとりでケア労働の重責を担う必要もない。『イクメン』という言葉に含まれた余分な価値観をふるい落とし、子どもをケアすることそれ自体が持つかけがえのない意味に向かい合ったとき、私たちははじめて『父親』になるのではないだろうか」(いずれも本書より引用)
同時期に出版された『ポストイクメンの男性育児』(平野翔太著、中央公論新社、2023年)も、著者が医師という専門的な目線で、これから父親になり育児に取り組もうとする男性にとって具体的なアドバイスが記載されている。再読してみてあらためて学ぶところが少なくなかった。(相)