映画「アイアム・ア・コメディアン テレビから消えた男」 7月6日から全国上映
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主人公は芸人・村本大輔
東日本大震災の爪痕が残る東北を歩きながら独演会を開き、植民地支配の歴史をめぐる禍根が残る日本と朝鮮半島の関係について、韓国の若者たちと堂々と議論する。独演会が終わっても観衆を誘って夜な夜な語り続ける…。独特なスタイルだ。
芸人・村本大輔。
ウーマンラッシュアワーとして、第43回NHK上方漫才コンテストやTHE MANZAI 2013で優勝した後、ピーク時には年間250本のテレビ番組に出演する勢いを見せるも、2020年の出演はたった1本。そしてついに村本はテレビから姿を消した。
村本が原発の危険性や政治家の汚職といったこの国の在り方を根本から問う事実を吐き出したからだろう。
原発の街・福井で育った経験や学校制度になじまなかった経験もガッツリ語る。しかし今や日本の企業ジャーナリズム、テレビの世界には国の統制がおよび、村本の「異論」を受け入れる土壌はない。生活の糧を奪われる村本、しかし彼は腐ることはなかった。今年からスタンダップコメディの本場・米国に渡って自身の「言葉の土壌」を耕している。
「俺が好きな黒人の芸人にはこういうネタがあるんですよ。『どうして黒いバンドエイドはねえのか』この一言で笑わせる。俺たちは怪我しちゃいけねえのかと。この一言ってすごく考えさせられる」
そして、在日コリアンに期待する。「自分のルーツをコメディにする土壌は健全だと僕は思うんですよ。在日(コリアン)の人たちの違いは、面白さだと思っていて。日本でもっともっと内側から、もっと強く、もっと濃く、 自分の怒りとか悲しみとかをコメディで表現するやつが増えてほしいと思う」。
映画は家族との出会い直しと別れ、新型コロナウイルスの感染が広がるなか、独演の場がどんどんなくなっていく「孤独」と向きあう表情も追った。監督は、「お笑いに一途な」村本に惚れこんだという日向史有監督。『東京クルド』などを撮ったドキュメンタリー作家だ。
映画には年末のMANZAIで村本が朝鮮高校生への無償化差別を早口でしゃべり倒す懐かしい場面も出てくる。村本が知人を通じて広島の朝鮮高校生の存在を知り、かれらの学校で独演会を開き、朝高生に降りかかった差別を自分自身につきつけ、世に訴えたことを私は忘れない。映画上映は7月6日から。村本が日本に戻ってくる。(瑛)
アイアム・ア・コメディアン
https://iamacomedian.jp/
日向史有監督/出演:村本大輔 (ウーマンラッシュアワー)、中川パラダイス (ウーマンラッシュアワー)他/2022年(日本=韓国)/108分/配給:SPACE SHOWER FILMS/7月6日(土)からユーロ―スペースなどで全国公開