東北―感情が動く場所
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早いことに、今年も上半期が過ぎようとしている。
先週末、遅い梅雨入りを果たした東京。ここ数日で雨が降った日は多くなく、それよりもどんよりした雲り空の下、蒸し暑い天気が続いている。
今のような陽気の中では特に気を付けないと、心も体もまいってしまう。踏ん張りどきといった感じだろうか。夏に向けて、体力も精神力もしっかり向上させていきたい。
さて、先日完成したイオ7月号は楽しんでいただけているだろうか。
特集や連載などオススメ記事が盛りだくさんだが、今日のブログで紹介したいのはコチラ。
先月、岩手と秋田で行われた東京朝鮮歌舞団の特別ステージの記事だ。
東北6県青商会による「ALL東北プロジェクト」の一環である「東北同胞社会を元気にするプロジェクト」の目玉企画として行われた公演は、両県の総聯本部、北東北青商会(青森、岩手、秋田)からなる公演実行委およびALL東北プロジェクト実行委が主催したもの。
岩手、秋田とも、広い土地に同胞宅が点在する過疎地域。同胞たちが一堂に会す機会を作るのは至難の技だ。公演実行委員会のメンバーは連日準備に明け暮れた。日曜日には車を走らせ、広い県内に散らばった同胞たちを訪ねて回った。
当日、会場を訪れた皆の表情が忘れられない。そのほとんどが、はじめて、あるいは久しぶりに歌舞団の舞台を見る人たちだった。
ぜひ、誌面を手に取って同胞たちの声を「聴いて」ほしい。
◇◇
東北には個人的にも思い入れがある。
朝鮮大学校に通っていたとき、友人の地元である岩手・盛岡に遊びにいったのがはじめての東北旅だった。大雪が降る中、友人のアボジが東京から車で盛岡まで連れて行ってくれた。お腹いっぱい食べさせてもらった盛岡冷麺、雪降る中で食べた小岩井農場のソフトクリーム、友人やその家族の皆さんのぬくもり… 今思い出しても心があたたまる。
また、いわゆる「3年目の壁」とやらにまんまとぶち当たり、仕事やさまざまな悩みで人生に(今思うと大げさだと笑えるが本当に苦しかった)行き詰まったとき、週末仕事終わりにそのまま上野から新幹線に乗り込んで、当時宮城・仙台に住んでいたまた別の朝大時代の同級生の家に駆け込んだこともあった。わがままを言って早朝から松島に連れて行ってもらった。笹かまも焼いた。
そして、2021年2月。東日本大震災から10年の節目に、朝鮮新報の特集企画の取材のため、また東北の地を踏んだ。自分の価値観が大きく揺さぶられた経験だった。
2年前、宮城で行われた金剛山歌劇団の取材も印象深い。
さらに、1世の母方の祖父が青年期の一時を過ごした場所が青森にあるということも、祖父の日記を通して後から知った(今回の出張で一人フィールドワークをしてきた。また機会があったら書いてみたい)。
◇◇
とりとめもなくつらつらと綴ってしまったが、今いる場所や地元のほかに、感情が動く地域があるというのは幸せなことかもしれない。
それだけでない。
同胞たちが多く住む地域、同胞たちが少ない地域、ウリハッキョがある地域、ウリハッキョがない地域…実際に足を運んでこそ、見えるもの感じるものがある。良し悪しの物差しで図れない色んなものが、現場にはあふれているのだ。
「記者は足で稼げ」。今、かつての上司の言葉を思い出している。
足を運んで見てきたもの、聞いたもの、感じたものを、文章や写真を通して、読者の方と一つでも共有できれば幸いだ。
ちなみに、今回はじめて訪れた秋田で念願の「ババヘラアイス」を食べられたのも嬉しかった。
(鳳)