沖縄、「コロンブス」、わたしたち
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6月23日、沖縄は「慰霊の日」を迎えた。1945年のこの日をもって、沖縄戦において日本軍の組織的な戦闘が終わったとされている。日本軍司令官の牛島満中将や、その部下が同日(前日という話も)、自決したという。
沖縄戦を指揮した第32軍司令官である牛島中将は「本土決戦」のための持久戦として戦闘を長引かせ、住民たちを巻き込み「玉砕」を強いた。しかし先日、陸上自衛隊第15旅団のHPに牛島中将の辞世の歌が掲載されていることが判明した。沖縄戦体験者をはじめ各団体、個人から批判が噴出し、「慰霊の日」を前に削除を求めていたが、未だにそれはなされていない。旧日本軍と自衛隊の連続性がさらけ出された。沖縄では「軍隊は住民を守らない」「米軍より日本軍の方がこわかった」という戦争の記憶が語り継がれている。
昨日の報道では、沖縄で米兵による少女への性的暴行事件が発生し、那覇地検が起訴していたことが明らかになった。事件は昨年12月に起こり、犯人は逮捕。今年3月の起訴を前に外務省は起訴を把握したにもかかわらず、約3ヵ月間県側に伝えていなかった。沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設が県の頭越しで行われている中で発覚した。「慰霊の日」の戦没者追悼式で、首相は「基地の負担を重く受け止め、負担の軽減に全力を尽くす」としていた。
沖縄戦から79年。はたして「戦後」を迎えたといえるだろうか。朝鮮戦争では沖縄の米軍基地から飛び立ったB29戦闘機が朝鮮の頭上に爆弾を落とした。ベトナム、キューバ、ユーゴスラヴィア、イラク、リビア…これまで米国が爆弾を落とした国々は枚挙にいとまがない。米軍基地があることで、米国の国家テロに間接的にせよ加担する/させられることになる。
そしてこれらは、日本人の「無意識の植民地主義」(野村浩也)によって継続してきた。
日本では先日、人気バンドであるMrs. GREEN APPLEの新曲「コロンブス」のミュージックビデオによって、製作陣の植民地主義、人種主義に対する無自覚さが露呈した。SNSなどで多く注目を集めた今回の出来事。しかし一方で、今年「群馬の森」追悼碑が県行政によって強制「撤去」された際にはここまで社会問題化しただろうか。日本社会で植民地主義、人種主義を克服する過程で、「コロンブス」のMVの一件が注目を集めたとは到底思えない。
私は昨年11月、沖縄の地を踏んだ。現地で取材する過程で、構造的な暴力の下に置かれている沖縄人と在日朝鮮人が連帯できる可能性を大いに見だした。ただ、一概に沖縄人を朝鮮人と同一視することはできない。それぞれのポジションでそれぞれが克服しなければならないことがある。そこではじめて真の連帯の道が広がるのだ。しかし、最も問われるべきは抑圧されている者たちではないことは言うまでもない。(哲)