勝手に期待して落胆する
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「初めて入る店」へのハードルはなかなか高い。そして勝手に「期待」する。期待以上のものだった場合、何となくその日はずっと幸せで、そうでなかった場合、勝手に「落胆」し、しばらく引っかかって、いつの間にか印象に残らなくなる。以下、経験談を挙げる。
………………………
●近所の美容院
カット代の安さに惹かれたが、美容師に覇気がない。提案はしてくれるが、受け答えに不安が残った。
渡されたタブレットには、一度も観たことがないテレビドラマが第5話から再生されていた。前の客の履歴だろうか? ドラマに興味がなかったので、タブレットをそっと閉じた。
このあとどうしよう。美容師発の会話もないし、ずっと無言も気まずい。よっしゃここはよく喋る人を演じるか!と話題を切り出してみた。
「カット代安いですよね。ずっとこの値段なんですか?」「あ、はい」
「お一人でやられてるのに、この値段って珍しいですね(小型サロンは大体4000~5000円する)」「あー。そうですか?」
「……」「……」
会話が苦手な美容師もいるわな、と思うことにした。カットの出来は微妙だった。
●老舗喫茶店
喫茶店が多い神保町でお茶がしたくて、いい感じの店があったので並んでみた。昭和感漂う看板のフォント、レトロで暗めな雰囲気ある店内、ナポリタンにクリームソーダ…。気付いたら後ろに4、5組並んでいた。有名な店なんだろうなとワクワクしながら20分ほど待った。
ケーキセットに大好きなバナナケーキがあったので注文したら、バナナの味が全然しない。「こんなものなのかな」と言い聞かせながら食べ進めたが、「自分で作ったバナナケーキの方がうまいな…」と一瞬思ってしまい、なんだか悲しくなった。
会計は現金のみ。それは別にいいのだが、財布の中身が見えない店内の暗さにちょとムカついてしまう。
●洋菓子店
ちょうどバレンタインの時期。帰り道にある洋菓子店が少し気になっていたので、入ってみた。店内の商品を一通り見たが、あまり胸が高鳴らない。
全体的に子ども向けの商品と内装。デパートに売っているような洗礼された美しいチョコがあるかと期待したが、そこにはなかった。
これかな…と何となく選んだ商品をレジに持っていく。店員にプレゼント用かと聞かれ、「自宅用」の言葉が出てこず「自分用」と答えてしまってちょっと恥ずかしかった。
………………………
都合のいい「期待」「願望」に沿わなかった結果、「悲しみ」や「落胆」などの感情を抱いてしまう。ずっとそのスタンスでやってきた店側からしたら知らんがなって感じだ。
この感情を取り払うにはなかなか時間がかかる。金銭が発生しているからという理由もあるだろう。「あんまりやったわ~」とか「満足度〇〇%!!」とか、声に出して納得させると昇華できるし、そのあと忘れることができる。
思ってしまうのは仕方がない。ただ、これらの感情を制御できずに「怒り」に支配されてしまわぬようにしたい。
オタク界隈では「ノットフォーミー」という言葉がある。「自分には合わなかった」。そう判断したら、次の楽しみを見つけて上書きすればいい。
万人が「また必ず来たい」と思う店って、改めてすごい。(麗)