ホン・ヨンウ回顧展「郷愁」 /25日まで練馬で
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絵本『洪吉童(ホンギルトン)』、1996年の月刊イオ創刊号から長期連載された『ウリマル図鑑』などで知られる洪永佑さん(1939-2019年、朝鮮民主主義人民共和国の人民芸術家)の回顧展「郷愁」が8月20日から、東京都の練馬区立美術館区民ギャラリーで開かれています(25日まで)。
洪永佑さんは愛知県岡崎市生まれ。
日本の学校で育った洪さんが自身のルーツに目覚めたのは二十歳を過ぎてから。
回顧展では、洪さんが1980年代に朝鮮で描いた「妙香山 上元庵」「平壌駅」「朴淵瀑布泛桰槎亭」、朝鮮時代の庶民の暮らしを描いた「端午の節句」「市の日」「唐辛子市」「秋の風景」など29点の朝鮮画、朝鮮青年社時代に描いたマンガ(2冊)、日本や韓国で出版された絵本(25冊)などの作品が展示されました。
絶筆となった朝鮮の市場を描いた2メートル近いデッサンも、本回顧展で初公開されました。
初日の20日12時に回顧展が始まると、地元練馬区をはじめ、関東地方の各所から訪れた人たちが洪さんの絵に見入っていました。生前に縁のあった人たちが差し入れやお祝い金を持って家族たちと回顧展開催の喜びを分かち合い、絵をじっと見る姿が印象的でした。
「洪さんの絵は、墨で輪郭を描き、そこに水彩顔料で色をのせていく技法です。朝鮮時代の市場を描いた絵にはたくさんの人たちが登場しますが、その誰一人も似ていないのがおもしろい。話を楽しんだり、子どもをあやしたり、市場で掛け合いをしたり喧嘩したりと、それぞれのドラマが描かれています」と語るのは、ありし日にともに同胞美術の現場にいた高石典さん(61、茨城朝鮮初中高級学校)。
洪さんは2019年に急逝(享年79)。
回顧展を企画した長女の洪誠玉さん(54)は、「アボジは80歳を目前に亡くなりましたが、創作への強い意欲を持ち続けていて、やりかけのまま残された仕事がいくつもありました。民俗画の構想を下書きしたもの、連載中だった児童文学の本の挿絵も最終回分が未完で、月刊イオで長く連載してきた『ウリマル図鑑』を本格的に出版する道も模索中でした」と無念を語ります。
告別式で「アボジの絵を並べたらどうか」と助言してくれたのは当時、総聯練馬支部委員長だった林柱烈さん。娘の誠玉さんは、遺されたデッサンや未公開の絵を見るにつれ、葬儀の時にアボジの絵をじっと見る弔問客の様子が目に幾度も浮かび、再び父の絵を見てもらいたいと思うようになったといいます。
回顧展は8月25日(日)16時まで。
24日(土)の午前11時からは、「ホン・ヨンウの昔話絵本の読みきかせ会」(『まぬけなトッケビ』『ふしぎな瓶かめ』)、14時からは、「洪永佑さんとの思い出」と題したリレートークが行われ、同郷の友人、美術運動をともにした画家、出版界の友人たちが思い出を語ります。洪永佑さんの原画の世界をどうぞお楽しみください。(瑛)
●洪永佑(ホン・ヨンウ)回顧展「郷愁」●
開催日:2024年8月20日(火)~25日(日)
開催時間:8月20日は12時~18時、21日~24日は10時~18時、25日は10時~16時
場所:練馬区立美術館区民ギャラリー(西武池袋線「中村橋」駅下車3分)
※イベント情報
8月24日(土)午前11時~「ホン・ヨンウの昔話絵本の読みきかせ会」(『まぬけなトッケビ』、『ふしぎな瓶かめ』)、午後14時~リレートーク「洪永佑さんとの思い出」
※物販情報
図録「洪永佑回顧展—郷愁」、展示作品のポストカード