中村一成『今日に抗う 過ぎ去らぬ人々』/三一書房から出版
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”語り抜く決心”―
6年分の連載が一冊に
本誌2018年1月号から6年にかけて連載されたジャーナリスト・中村一成さん(54)のエッセイ「在日朝鮮人を見つめて」「今、この時代を生きる」が一冊の本になり、9月2日に三一書房から出版された。タイトルは『今日に抗う 過ぎ去らぬ人々』。
連載が始まったのは安倍晋三首相が二度目の宰相の座について5年近くが過ぎた頃だ。「人と人を分断する言葉が大手を振るう。『言葉』が徹底的に破壊され、レイシズムの蔓延と歴史否認・改竄の横行に歯止めがかからなくなってきた」(まえがきから)。だからこそ、記憶と記録をひもときながら先人と対話し、「暗い時代の中に煌めきを見出す」言葉を探った。
在日高齢者無年金訴訟の原告・鄭福芝さん、鄭在任さん、玄順任さん、ウトロの語り部・姜景南さん、金君子さん、「反入管法闘争闘士」の高英三さん、「忘れられた皇軍」・姜富中さん、朝鮮人被爆者の「救済」に生涯を捧げた李実根さん…。筆者に「思想」の意味を教えてくれたという朴鐘鳴さんや親鸞の弟子・高史明さんの「ありし日」と含蓄ある言葉も柔らかくも鋭い感性でつづられた。
何より植民地、祖国分断といった在日朝鮮人の「生」を規定するさまざまな不条理のなかでも、「今」を懸命に生きる人たちの姿が勇気をくれる。
元死刑囚の李哲さん、日本籍朝鮮人として自らの生き方を創造し続ける朴実さん、韓国で正義の実現を待つ強制動員被害者・梁錦徳さん、李泰植さん。高校無償化裁判、京都朝鮮学校襲撃事件を闘いぬいた朝鮮学校の保護者や朝高生たち、人間を破壊するヘイトと正面から向き合い、裁判闘争を通じて新たな展望を切り開いた崔江以子さん、石橋学・神奈川新聞記者の言葉には強い意志がにじむ。
72本に及ぶ連載の最初と最後のテーマは「パレスチナ」だ。筆者はイスラエルによるガザへのジェノサイドが続き、「世界の凋落が止め処ない」状況になっていることに胸を痛めながらも、「語りぬく決心」を披歴し、320ページにわたる本書を結ぶ。
「どれだけ状態が厳しくても、先行きが見えなくとも、孤立しても、人間であることは如何なることか、人間にとって大事なことは何か、本当の生き方とは何か…今は違うが、世界はこうあるべきではないかについて書き、語ることだ」(あとがきから)—。
購読先は、三一書房のホームページhttps://31shobo.com/2024/07/24005/から。
10月27日には、京都・ウトロ平和祈念館で出版を記念した講演会が開かれる。出版を機に新たな対話が生まれることを願っての企画だ。
▼書誌情報
『今日に抗う 過ぎ去らぬ人々』(中村一成著)
カバーデザイン協力:鄭愛華
四六判 ソフトカバー 320頁
ISBN978-4-380-24005-8 C0036
定価:本体2500円+税
10月27日、京都で出版記念講演会
日時:2024年10月27日(日)14時半~16時(16時半から焼肉交流会)
場所:ウトロ平和祈念館(近鉄京都線「伊勢田駅」出口から西へ500m)
参加費:講演会は無料、焼肉交流会は3000円、飲み物代は別
主催:中村一成出版記念講演会実行委員会
問合せ:utorokouen2024@gmail.com/☎03・6820・0107(月刊イオ編集部)/☎0774・26・9222(ウトロ平和祈念館)
申込方法:Googleフォームからお申込みください。https://docs.google.com/forms/d/1_ClFbVzwP6fS8a_N-1MHEDpzw8tQ_BtgxnVGJE9Y8xA/edit
※定員になり次第、締め切ります。