中国ドラマ『三体』を楽しむ
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中国のSF超大作ドラマ『三体』が面白い。
ドラマ『三体』は中国のSF作家・劉慈欣(リウ・ツーシン)による同名のベストセラー小説が原作。2023年1月に中国の配信プラットフォーム「テンセントビデオ」で配信後、2024年からWowowオンデマンド、U-NEXT、Amazon Primeなどでも配信が開始された。
【『三体』のあらすじ】
2007年、北京オリンピック開催間近の中国。ナノ素材(マテリアル)の研究者・汪淼(ワン・ミャオ)は、突然訊ねてきた警官・史強(シー・チアン)によって正体不明の秘密会議に招集される。そこで世界各地で相次ぐ科学者の自殺、そして知り合いの女性物理学者の死を知らされた汪淼。
一連の自殺の影に潜む学術組織「科学境界(フロンティア)」への潜入を依頼された彼は、科学境界の“主”を探るべく、史強とともに異星が舞台のVRゲーム「三体」の世界に入るが、そこにはある秘密が…。(公式サイトから)
ドラマはなんと全30話!(原作1巻分) 中国ドラマでは寧ろ少ない方だという。私は2週間で完走した。
また、同名小説を原作としたNetflix版『三体』も配信中だ。こちらはイギリスが舞台で、オックスフォード大学卒の5人の主要キャラが登場するなど、大幅なアレンジが加えられている。全8話なので観やすく、中国版よりも先の展開まで進む。
原作未読の私はNetflix版を先に観たあと、アマプラで中国版を視聴した。後者の方が「原作に忠実」と評価されている。原作改変は特に気にならず、サクサク展開で三体の世界観や謎を把握したいなら、Netflix版がオススメ(グロ耐性皆無の人には一部キツいシーンがある)。
物理、科学、天文学、ゲーム理論など、さまざまな高度な視点が詰まっている本作。物語は、二つの時間軸で構成されている。ひとつは2007年、もうひとつは1960年代の中国で起きた「文化大革命」の時代だ。文化大革命と現代がどのように結びつくのか…? ネタバレになるので詳しくは書かないが、60年代パートでは物語の鍵となる「すべての始まり」が徐々に明らかになっていく。
中国版は30話と長いが、相次ぐ科学者たちの自殺、謎のカウントダウン、科学境界の実態とVRゲーム「三体」の目的、“主”とは一体何なのか―じっくりと「謎解き」していくのが面白く、このじっくりの中にいくつも張られた伏線が、ラストにかけて回収されていくのが気持ちいい。
また、物理学の崩壊と絶望を目の当たりにした科学者たちの苦悩など、人物描写の丁寧さも個人的に好ポイント。
何より、脚本、映像、音楽…すべてのクオリティが高い。VRゲーム「三体」のシーンでは、実際にゲームをプレイしているかのように映像がフルCGになっていて、制作側のこだわりを感じる。このゲームシーンがほとんどを占める回もあって、めちゃくちゃお金が掛かっているのが一目瞭然だ。
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ここからオタクの視点が入るのだが、個人的に推したいのは主人公の汪淼(ワン・ミャオ)と警官・史強(シー・チアン)だ。もうこの二人の関係性は「ブロマンス」(※)と言っていいだろう。※「ブラザー」と「ロマンス」を掛け合わせた造語で、男性同士の友情を指す。
史強は一見、粗暴に見えるが有能で、精神的に不安定な汪淼に寄り添い、汪淼の娘の面倒を見、児童書で天文学を学ぼうとする。そんな献身的な姿に何かとグッと来てしまうのだ。
専門用語が飛び交う作中で、「分かるように翻訳(説明)してくれ」と、視聴者の代弁をしてくれるのもこの史強だ。作中では、かれが一番「人間味」があり、最も愛すべきキャラではないだろうか。
視聴し続けるとその理由が分かると思う。男気が溢れすぎてずっと「大史(史アニキ)…!!」となる。
汪淼にとっては決して良いとは言えない出会いだったが、史強の行動力と包容力によって徐々に信頼と友情を育んでいく、「おじさんバディ」が魅力的な作品でもあるのだ(オタクが好きなやつ)。なんでもドラマ版は、原作より「バディ色」が強いのだとか。ナイス…!
中国版は史強が主人公のスピンオフ、Netflix版はシーズン2の制作が決定している。日本に配信されるのはまだまだ先だが、続編開始を心待ちにしたい。(麗)