小説『三体』シリーズ、おすすめです
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10月21日に(麗)さんが日刊イオで「中国のSF超大作ドラマ『三体』が面白い。」という文章をアップしている。
日刊イオに『三体』が取り上げられたことにちょっと驚いた。
今年に入り小説『三体』を読んで大変面白かったが、日刊イオで取り上げるのはどうかなと思っていたからだ。
今日はドラマではなく小説『三体』について少し書きたい。
『三体』は中国のSF作家・劉慈欣の小説で2008年に出版、日本語版は2019年に早川書房から出版された。
2015年に「SF界のノーベル賞」とも形容されるヒューゴー賞の最優秀長編小説賞を受賞した。アジア人初の快挙である。
英語版が出版されたころから多くの国々で話題となり、私もいつか読みたいと思っていたのだ。
『三体』シリーズは3部作となっている。『三体II 黒暗森林』『三体III 死神永生』と続いている。この3作品が今年から文庫本になったので購入した(写真)。
感想は想像以上に面白かった。内容を事前にほとんどシャットアウトした状態で読んだこともよかった。
ネタバレにならない程度で書くと、小説は中国での文化大革命(1966~76年)の場面から始まる。3部作を通して、一般大衆が危機を迎えたときにパニックとなって愚かな行動を起こす場面が幾度か描かれる。SFだけでなく小説でよくあるパターンなのだが、作者の社会観、人間観の現れであるのだろう。
何よりよかったのは王道のSF小説であること。サイバー空間などを出すことなくSF小説本来の面白さでぐいぐいと読者を引っ張る(1部でVRゲームの世界が出るが、ゲームであることを明確にしていて物語の進行上必要なものだった)。
作者の劉慈欣は1963年生まれ。アーサー・C・クラークの『2001年宇宙の旅』を読んで本格的にSFにのめり込むようになったそうだ。
読んで感じたのは、作者がアイザック・アシモフの『ファウンデーション』シリーズの影響も大きく受けておりオマージュとなっているということ。小説の中でも『ファウンデーション』のことがほんの少し出てくる。
古典的な名作SFの正当な後継作。これはシリーズを読み終えた私の息子の感想だ。
SFつながりでもう一つ書きたい。
今年2月14日の(相)さんの日刊イオ「2023年の10冊」で、最後にジェイムズ・P・ホーガンのSF小説『星を継ぐ者』を紹介している。
私も昔読んで大変面白く感銘を受けたSFだ。続編の『ガニメデの優しい巨人』も楽しめたが、その後の『巨人たちの星』はちょっとテイストが違っておりいまいちだった。
ホーガンの作品としては『未来の二つの顔』もおすすめしたい。人工知能が人類に反乱を起こすというSFはよくあるが、この作品はそれを逆手に取ってうまく完結させている。
(麗)さんにドラマだけでなく小説の『三体』を薦めておいたが読んだだろうか。
私はこれからノーベル文学賞を受賞した韓国の作家、ハン・ガンの小説を読むつもりだ。(k)
※2010年4月16日の私の日刊イオ「SF小説」もついでに読んでもらいたい。