久しぶりにたちの悪い風邪を引いた
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「老いは、死と事情がよく似ている。人によってはこともなげに老いと死に立ち向かうが、それは彼らが他人より勇気があるからではなくて、想像力に乏しいからだ」
マルセル・プルースト『失われた時を求めて〈13〉第七篇 見出された時(2) 』(集英社文庫、鈴木道彦訳)より
先日、久しぶりに風邪を引いた。それも、だいぶたちの悪い風邪を。
始まりは全身の倦怠感から。この間、仕事で忙しかったので疲れが溜まっているのかもしれない、運良く週末なので、休めば回復するだろう、そう思っていた。
しかし、そうはならなかった。翌日になると全身の倦怠感は変わらず、熱っぽさが加わった。頭がぼーっとして思考能力も明らかに低下している。体温をはかったところ、38度オーバー。体温が38度オーバーになったのはいつ以来だろう。記憶にないということはだいぶ以前なのだろう。2年前に一家で新型コロナウイルス感染症に罹患したときも、発熱は37度台半ばだった。
熱は翌日になってもひかず。39度まで上がった。
休み明けに病院へ行き、コロナやインフルなどの感染症の検査を一通り行った結果は陰性。薬も処方してもらって一安心、とはならなかった。薬のおかげで熱は下がったが、今度は咳と鼻水に苦しめられた。夜中になると咳が止まらないのはかなりきつかった。幼子が寝ている隣で「ゲホゲホ」するのは、仕方ないとはいえ申し訳なさが募った。
風邪は2週間以上が経った今でも治っていない。これまでなら、風邪ならどんなにひどい症状でも1週間あれば完全回復していたのだが、加齢とともに病の治りが遅くなっていることを痛感している。もしかすると、風邪ではなくもっと深刻な病気なのではないかという疑念も一瞬頭の片隅によぎったが、表向きの症状が「ザ・風邪」なのでたちの悪い風邪なのだと思っている。
来年にはついに50代に突入する。冒頭に引用した一節にひきつけて考えると、老いと死について想像力に乏しいままではいけない年齢になってきたのは間違いない。(相)