『18人が語る 私とコリアン』 1月30日に販売
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映画監督の山田洋次さん、プロサッカー選手の三浦知良さん、故・アントニオ猪木さん、ジャーナリストの伊藤詩織さん、作家の平野啓一郎さん、李琴峰さん、芸人の村本大輔さんらに登場いただいた連載「イオインタビュー」が一冊の本になりました。
販売は1月30日から。本誌のホームページサイトから受付けます。
https://www.io-web.net/ad_watashi-to-korean/
この連載は2021年2月から本誌で約3年続いたインタビュー企画です。著名人の皆さんが、在日朝鮮人との出会いや思い出、日本社会における在日朝鮮人とのつながり、日本と朝鮮半島の未来を語ってくれました。
一人ひとりの言葉が力強く、温かかったです。
それぞれが大切に育んでいる交流や、朝・日の友好のためのアイデアも寄せていただきました。
執筆は本誌編集部の3世の記者が担当しました。手にとっていただけると嬉しいです。(瑛)
目次とまえがきを全文公開します。
●はじめに
「18人が語る在日コリアンと私」は、月刊イオに2021年2月から2024年1月までの約3年にわたって連載された「イオインタビュー」がもとになった本です。
このインタビューを担当した本誌の記者たちは全員が日本生まれの朝鮮人3世です。朝鮮半島にルーツを持つ在日コリアンは、世代を重ね、今や4世、5世が生まれる時代となりました。
2020年秋に行われた21年度年間企画会議でのこと。当時25歳だった編集部の朴明蘭さんが、1996年の本誌創刊当時に掲載されていた著名人のインタビューを復活させようという提案をしてくれました。
「高校無償化裁判は敗訴に終わったけれど、朝鮮学校を支援する日本の方々は増えました。その声を届けることで同胞たちや朝高生たちに元気を与えたい―」。その言葉にハッとさせられたことを今でも覚えています。そう!その通りだと。
2010年の民主党(当時)政権時に始まった高校無償化(就学支援金支給)制度は、学校教育法に定める「一条校」に加え、日本にある外国人学校の高校生をも対象にしたものでした。外国人学校への国庫補助は初めてとなる画期的な制度でしたが、朝鮮高校だけがその対象から外れ、13年からは日本各地の5ヵ所で朝鮮高校生249人が国を相手取って裁判を起こしました。裁判の結果は1勝14敗。大阪地裁で勝訴したものの、司法が国の差別を追認することによって、いまだ朝鮮高校だけが就学支援金の対象から外されています。
言うまでもなく、日本と朝鮮は一番近い隣国で、飛行機で2時間もあれば行ける場所です。そして近代の日本による植民地支配(1910-1945年)という悲しい歴史より、友好の歴史がもっと長い。そのことに気づかせてくれたのがイオインタビューの取材過程でした。
戦後に満州から日本に引き揚げてきた山田洋次監督は、山口県の炭鉱で働いていたとき、朝鮮人労働者に優しくしてもらった話を聞かせてくれては、「寅さん、コリアンの友人がたくさんいるんじゃないかな」と話してくれました。海老名香葉子さんは、幼いころに近所の朝鮮人の家族に朝鮮飴をもらったこと、落語一門を切り盛りするなかで体調を崩したとき、近所の李医師によって一命をとりとめた話を満面の笑顔で聞かせてくれました。
このように隣に暮らす者同士、曇りなき目で互いを見つめ、生きていきたい―。3年にわたるインタビューの過程は、私たちは出会い、語らうことができるということを改めて確認した日々でもあったのです。
執筆は、月刊イオ編集部の張慧純(山田洋次、村本大輔×木村元彦対談、アントニオ猪木、平野啓一郎、海老名香葉子)、李相英(田中敬子、ちばてつや、柳美里)、黄理愛(三浦知良、李琴峰、森達也)、朴明蘭(伊藤詩織、松浪健四郎)、康哲誠(目取真俊)が担当し、写真は、取材した記者に加えて、本誌デザイナーの鄭愛華、崔麗淳、朝鮮新報フォトグラファーの盧琴順が担当しました(敬称略)。
第3章には、朝鮮と日本の両国が国交正常化を約束した2002年の朝・日平壌宣言20周年に際して、識者に寄稿いただいた文章を載せました。
両国の間にはいまだ国交が結ばれていませんが、いつか自由に行き来ができる日が訪れることを切に望みます。
最後にインタビューに協力いただいたすべての方々と関係者の皆様に心からの感謝の言葉をお伝えします。ありがとうございました。
この本が在日コリアンと日本市民との新たな出会いを生む一冊になることを願っています。
2025年1月 月刊イオ編集部
●目次
第1章 在日コリアンと出会う
寅さん、コリアンの友人がたくさんいるんじゃないかな●映画監督・山田洋次
夫・力道山は朝鮮半島の平和を願っていました●力道山夫人・田中敬子
対談 「差別と笑い」 ―リアルな言葉は、予定調和を嫌う―●村本大輔×木村元彦
飽くなき情熱、ハングリー精神で●プロサッカー選手・三浦知良
日本は深い眠りから目を覚ませ●元プロレスラー・アントニオ猪木
第2章 書く。語り続ける。
社会問題の深部、人生からひもときたい●ジャーナリスト・伊藤詩織
〝世界への違和感〟から物語を紡ぐ●作家・李琴峰
コリアンの友だちを想いながら書きました●作家・平野啓一郎
「朝鮮人なら殺してもいいのか?」 今、問う― ●映画監督・森達也
今日よりも明日のために成長する姿を描いてきた●漫画家・ちばてつや
戦争に勝者も敗者もない。庶民が一番苦労します●エッセイスト・海老名香葉子
沖縄の被害と加害を見つめて●作家・目取真俊
被災地の書店、コロナ禍でも明かり消さない●作家・柳美里
第3章 朝鮮を語ろう
友好のメッセージを発信して●日本体育大学理事長・松浪健四郎
植民地支配責任の視点から見た歴史と課題●同志社大学教授・板垣竜太
共和国との学術交流で見えてきた●島根県立大学教授・福原裕二
〝制裁〟の苦しみ、原状回復に向け●在日本朝鮮人人権協会副会長・金東鶴