与えられたのは1時間。主にここ数年追ってきた朝鮮学校における保健教育や外国ルーツの子どもの学びについて話した。2018年12月に日本軍性奴隷制被害者で人権活動家の金福童さん、吉元玉さんとソウルで面会したこと、しかしこのお二人もこの6年の間に亡くなられたことを伝えながら、自分につながる歴史を大切にしてほしいと話した。
講義のあと、学生たちは私にいろいろと聞いてくれた。
質問の多くは主には在日朝鮮人、コリアルーツの自分の存在、それに連なる歴史を周りの日本の学生や大人たちにどう伝えたらいいのかという内容だった。「なかったもの」にされている歴史や自身の存在についてわかってもらうためには、何からどう話せば伝わるだろうか―という悩みだったように思う。
その質問を聞くだけで、学生たちが置かれた状況が想像できた。
日本の教育現場では、日本の朝鮮植民地支配について教えられていないし、あったことがなかったことにされている。日本と朝鮮との間に横たわる歴史と私たち在日朝鮮人の存在は直接的に関係しているので、歴史を知らなければ「あなたたちはなんでここにいるの?」「日本語お上手ですね」となってしまう。
その齟齬に苦しみ、戸惑っている学生は多い。説明責任を一身に背負わされているのだから。
私自身は大学まで朝鮮学校に通ったが、子どもを日本の保育園に通わせていた頃、日本の母親たちとよき出会いがあった。今でもたまに食事に行ったり、子どもの成長や子育ての失敗談に一喜一憂する関係が続いている。
10年ほど前、保育園であるママと他愛もない話をしていた時、国籍がどこかと聞かれ「なんで日本生まれで日本人と同じなのに、日本国籍を取らないの?」と怪訝な顔をされたことがあった。一方、ある友人のBさんは「朝鮮籍だ」と答える私に「私は○○○さんをリスペクトする!」と励ましてくれた。
また、お連れ合いがメキシコで働いていた女性は、メキシコで暮らしていたとき、朝鮮籍の青年の旅行手続きを担当したことがあり、在日コリアンへの日本政府の差別は「絶対に許せない」と怒ってくれた。
このような出会いがあったからこそ、私は日本社会に絶望せずに生きてこられたと思うし、安心して子育てができた。そして、学生のみんなにも、この先、必ずこのような出会いがあると伝えたい。
そして、ここからが本題。
3月1日(土)、留学同京都の学生さんたちが、浮島丸事件を題材にした演劇を上演する。今までも各地の留学同は演劇を通じて問題意識を伝え「共感」を広げてきた。足を運んで応援していただきたいと思います。(瑛)
以下、留学同京都のページからの転載です。
…
1945年8月24日。朝鮮の解放とともに日本から故郷を目指した朝鮮人。そんな朝鮮人たちを乗せた『浮島丸』は京都舞鶴にて突然爆発し、沈没しました。多くの尊い命が犠牲になった中、日本政府は爆沈の原因や乗船者の数など真相究明を避けたまま、80年の月日を迎えようとしています。
私たち留学同京都は、この「浮島丸爆沈」についてまずは学び、そして公演を通じ、少しでも多くの方々にこの事実を知ってもらい、皆さまと共に真相究明、植民地主義の清算を前進させる場にできればと、本公演を決起しました。
「演劇」「サムルノリ」等を通じて、在日同胞学生たちとそれを取り巻く社会、歴史と現在に対する思いと主張を表現できればと思います。
たくさんの方々のご来場をお待ちしております。
浮島丸爆沈から80年 「凪に響くさざなみの聲」
▶日時:2025年3月1日(土)15:30開場 16:00開演
▶会場:京都市国際交流会館イベントホール(地下鉄東西線「蹴上(けあげ)」駅徒歩6分)
▶入場料:一般:1,500円 大学生以下:無料
▶主催:在日本朝鮮留学生同盟京都地方本部
▶お問い合わせ:rhtkyoto.923@gmail.com