高校無償化の拡充を巡る一連の動きに接して
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3月6日からJR横浜タワーアトリウムで行われている子どもたちの作品展「EMPOWERING TOMORROW –未来へつなぐアートの力」。「差別をやめよう!」というタイトルの作品が印象に残った。
就学支援金の所得制限撤廃などを盛り込んだ2025年度予算案が3月4日、衆議院を通過し、成立の見通しとなった。
自民党、公明党、日本維新の会、政党間の駆け引きの道具となった高校無償化。制度の拡充を巡るニュースを見るたびに何とも言えない負の感情が胸の中に渦巻く。朝鮮学校が高校無償化制度から排除されて15年(完全に除外されてからは12年)が経つ。排除された朝鮮高校生を置き去りにしたまま、制度はどんどん前に進む。「置いてけぼり」ここに極まれりで、制度の恩恵を受けているほかの高校生たちの背中ははるか前だ。
2月28日、市民有志らが都内で記者会見し、無償化に朝鮮学校を加えることを求める「声明」を発表した。「広く一般の日本人高校生、多数の外国人学生に対してすでに実施されている高校無償化措置をさらに手厚くするのであれば、従来の措置から排除してきた朝鮮高校の生徒たちに対する差別措置をやめ、この人々の高校進学にも当然適用する必要があると考えるべきです。現在在日朝鮮人の教育機関については、高校のみならず、幼稚園から大学校まで、全て教育支援措置の対象外とされています。この機会に朝鮮高校を手始めに教育無償化措置の対象に加えることが望まれます」。
「高校無償化」と言うなら、朝鮮学校排除という明白な差別を撤廃すべきなのだが、残念ながらその問題は社会的に見向きもされていないのが現状だ。高校無償化拡充の問題が連日ニュースに取り上げられるが、助成の枠組みから朝鮮学校が不当に排除され続けていることについてはほとんど話題にならない。
高校無償化制度からの朝鮮学校排除を巡る一連の動きは、「戦後80年」を迎えるこの国が植民地主義からいまだ脱していないことを端的に示すものだといえる。
朝鮮学校排除を決定づけた記者会見(2012年12月28日)を行った第2次安倍政権の文科大臣・下村博文氏は産経新聞の取材に対し、「日朝国交正常化と連動すべきであり、拉致問題も全く動いていない以上、無償化はあり得ない。生徒は日本の高校に通ってほしい」と語っている。主張内容は13年前と首尾一貫していて、ある種の清々しさを感じるほどだ。
高校無償化の拡充を巡っては、外国人学校や外国人生徒を対象外としようとする動きもある。朝鮮学校排除をさらに強固なものにし、あまつさえ時計の針を無償化制度前の過去に戻そうと企てる者たちがいる。そんな悪だくみを許してはならない。
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現在上映中のドキュメンタリー『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』。イスラエルのパレスチナ弾圧を鋭くえぐった作品だ。3日に発表された米アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞も受賞した。
ひいき目でなく、いま必ず観るべきドキュメンタリーだと自信を持って言える。
パレスチナ人のバーセルとユダヤ人のユヴァル。本作の監督たちは弾圧されてもカメラを止めない。イスラエルの暴虐を記録し、異議申し立ての声を上げるのはおのが存在証明だといわんばかりに。
歴史的経緯も、置かれた政治・社会状況も違うが、不正義に対する異議申し立てという点で、私たちとパレスチナのたたかいはつながっている。作品を見ながらそんなことを思った。
本日、文部科学省前では恒例の「金曜行動」が行われる。朝・日の市民有志のほかに、東京朝鮮中高級学校の高級部生徒たち、朝鮮学校関係者が参加予定だ。(相)