『あの日、群馬の森で 追悼碑はなぜ取り壊されたのか』を観てきた
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群馬県高崎市にある県立公園「群馬の森」に設置されてあった朝鮮人強制連行犠牲者追悼碑が撤去されて1年が経った。
この追悼碑撤去問題を取り上げたドキュメンタリー『あの日、群馬の森で 追悼碑はなぜ取り壊されたのか』(三宅美歌・日下部正樹監督)が3月14日から始まった「TBSドキュメンタリー映画祭2025」で上映中だ。
17日、ヒューマントラストシネマ渋谷で本作を鑑賞してきた。
「群馬の森」にあった追悼碑は戦時中、日本の植民地支配下の朝鮮半島から日本に強制連行され過酷な労働を強いられた朝鮮人労働者を悼む碑だった。追悼碑はどのような経緯で建てられたのか、そしてなぜ取り壊されたのか。この追悼碑を通してこの20年間の日本社会の変化を描いている。「群馬の森」追悼碑の撤去だけでなく、日本全国に広がる歴史否定、歴史改ざんの動きも追っている。
群馬県で朝鮮人強制連行・強制労働の歴史の掘り起こしを進め、追悼碑の建立に尽力してきた方々の無念の思いがスクリーンを通じて痛いほど伝わってきた。
追悼碑の撤去は、直接的には加害の歴史をなかったことにしたい右派・排外主義団体の執拗な抗議運動に端を発したものだった。しかし、撤去という事態を招いた最大の原因は、このような歴史修正の動きに加担し、撤去を決めた群馬県にある。裁判で県の措置について合法という判決を下した司法も責任を免れない。そして、その一連の動きの背景に日本社会を覆う歴史修正主義があることは言うまでもない。
作中、日本維新の会の馬場伸幸議員や山本一太知事のインタビュー場面が映るが、彼らの主張がいかに無理筋なもののかがよくわかる。
事なかれ主義、ご都合主義に終始し、歴史修正・排外主義勢力に成功体験をもたらしたという点で今回の群馬県の対応は本当に罪深い。
「群馬の森」追悼碑の撤去は他の地域にある同様のモニュメントにも影響を及ぼすだろう。これは群馬だけの問題ではない。
「戦後80年」を迎える2025年、日本では加害の歴史を記憶し、反省するのではなく、それを隠したり矮小化したり否定しようとする歴史修正主義が跋扈している。そのような時期に本作が上映され、問題にあらためて光が当てられる意義は小さくない。
「TBSドキュメンタリー映画祭2025」は3月14日から4月11日まで東京・名古屋・大阪・京都・福岡・札幌の全国6都市で順次開催される。
「あの日、群馬の森で 追悼碑はなぜ取り壊されたのか」の上映スケジュールは以下の通り。一見の価値のある作品だ。(相)
3/17(月)14:30 ヒューマントラストシネマ渋谷(東京)
3/21(金)18:30 ヒューマントラストシネマ渋谷
3/27(木)12:30 ヒューマントラストシネマ渋谷
4/01(火)12:45 センチュリーシネマ(名古屋)
4/02(水)14:10 テアトル梅田(大阪)
4/03(木)12:30 キノシネマ天神(福岡)
4/07(月)12:15 アップリンク京都(京都)