友人らが手掛けた演劇「白い輪、あるいは祈り」
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先週、六本木の俳優座劇場に演劇「白い輪、あるいは祈り」を観てきた(3月19~23日)。
この演劇は、このブログで何度も取り上げている東京演劇アンサンブルの作品で、劇団創立70周年記念公演Ⅲとなっている。ベルトルト・ブレヒトの「コーカサスの白墨の輪」をベースにしている。
本作を作・演出したのが鄭義信さん、これまで「月はどっちに出ている」や「焼肉ドラゴン」などを手掛けた。主役の一人が洪美玉さん、本作では裁判官を演じながら物語全体を回す役割で舞台にほぼ出ずっぱりだった。
二人とも私の友人である。

パンフレットより
戦乱の中で引き裂かれる男女。かのじょは仕方なく領主夫人の乳飲み子をつれて逃亡することになる。クライマックスは裁判。領主夫人とかのじょのどちらが母親なのかが裁かれる。
物語が進むなか観客席から常に笑いがあふれる。全編にわたり出演者が歌いミュージカルと言ってもいい作りになっている。小道具としてチャンゴが出てくるのもいい味を出していた。
鄭さんがパンフレットに書いているが、ブレヒトの原作のラストはあまりにも唐突で能天気だとのこと。しかし本作はけっしてハッピーエンドではない。ロシアとウクライナやイスラエルとパレスチナとの紛争など希望と出口が見えない現状がある。
鄭さんなりに物語の結末を考えたという。最後に次のように文章を結んでいる。

パンフレットより
「しかし、どれほど世界が悲惨で不条理なものであったとしても、一筋の光が、ちいさな希望が存在してほしいと、切に願うのだ」
ちなみに俳優座劇場は4月30日で閉館するとのこと。閉館前に初めて入ることができて良かった。(k)