ポドゥナムの里から – ページ 7 – イオWeb

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ポドゥナムの里から

数のことを考えています− 柳美里

 数のことを考えています。
 今日現在、東日本大震災の死者数は1万4662人、行方不明者数は1万1019人――、大きな災害や事故が起こるたび、犠牲者がひとつの数に一括されることに、わたしは強い抵抗をおぼえます。

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あの日を境に、わたしの時間は…− 柳美里

 あの日を境に、わたしの時間は「進む」ことができなくなりました。「進む」のではなく、「退いて」いるように感じられるのです。
 カレンダーのような時間の枠は、もう組み立てられないのではないか――。
 時計のような時間の密度は、もう保てないのではないか――。
 地震と津波によって時間の枠組みが瓦礫となり、放射能によって時間の密度が侵食されつづけている今――、どのようにして時間を進めればいいのか――、わたしは、今、考えています。

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息子がイジメに遇いました− 柳美里

 息子がイジメに遇いました。
 二月九日水曜日、給食後の昼休みに、息子は幼稚園からいっしょのAくんに「鬼ごっこをやろう」と誘われて、校舎裏の駐車場に行きました。
 「鬼ごっこ」に加わったのは、Aくんの他にBくん、Cくん、Dくん――、五年一組の四人の男の子たちでした。
 Aくんに「鬼」になるよう命じられた息子は、両手で顔を覆って、「もぉいいかぁい」と言いました。
 「まぁだだよぉ」という声の代わりに、四人の男の子たちは息子めがけて一斉に石を投げつけたのです。

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父の故郷にお墓参りをしてきました− 柳美里

 一月八日、父の故郷(わたしの本籍地でもある)慶尚南道山清郡に、父の父母、祖父母、曽祖父母、父の二人の兄のお墓参りをしてきました。
 智異山が近いせいか、足踏みをしないと立っていられないくらいの寒さで、山も道も墓も雪で真っ白でした。

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辛くなるとアリランを聴きます− 柳美里

 辛くなると、アリランを聴く。
 眠れない夜に自宅のベッドで聴くことが多いのだけれど、ウォークマンを持ち歩き、移動中の乗り物でも、缶詰中のホテルや旅館でも聴いています。

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息子と大同江のほとりを歩きました− 柳美里

 祖国――、わたしの国籍は大韓民国ですが、わたしの家族が日本に渡ってきたとき、祖国はひとつだったわけだから、わたしは大韓民国、朝鮮民主主義人民共和国のどちらも「ウリナラ」だと思っています。
 息子が「ウリナラ」を訪れるのは、今回で二度目になります。

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夏は、なんといっても平壌冷麺です− 柳美里

夏は、なんといっても平壌冷麺ですね。二年前から平壌冷麺に取り憑かれ、最近では夢のなかにまで出現して、歯ごたえのある麺を噛み、コクがあるのにサッパリしているあの魅惑のスープを一滴残らず飲み干す有様なのです。

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時調を朝鮮語で朗読しました− 柳美里

朝鮮人であるわたしに与えられたテーマは「民族詩をめぐって」で、万葉仮名の原典「郷歌(향가)」と、朝鮮固有の定型詩「時調(시조)」について語るというものでした。

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