数のことを考えています− 柳美里
数のことを考えています。
今日現在、東日本大震災の死者数は1万4662人、行方不明者数は1万1019人――、大きな災害や事故が起こるたび、犠牲者がひとつの数に一括されることに、わたしは強い抵抗をおぼえます。
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数のことを考えています。
今日現在、東日本大震災の死者数は1万4662人、行方不明者数は1万1019人――、大きな災害や事故が起こるたび、犠牲者がひとつの数に一括されることに、わたしは強い抵抗をおぼえます。
あの日を境に、わたしの時間は「進む」ことができなくなりました。「進む」のではなく、「退いて」いるように感じられるのです。
カレンダーのような時間の枠は、もう組み立てられないのではないか――。
時計のような時間の密度は、もう保てないのではないか――。
地震と津波によって時間の枠組みが瓦礫となり、放射能によって時間の密度が侵食されつづけている今――、どのようにして時間を進めればいいのか――、わたしは、今、考えています。
息子がイジメに遇いました。
二月九日水曜日、給食後の昼休みに、息子は幼稚園からいっしょのAくんに「鬼ごっこをやろう」と誘われて、校舎裏の駐車場に行きました。
「鬼ごっこ」に加わったのは、Aくんの他にBくん、Cくん、Dくん――、五年一組の四人の男の子たちでした。
Aくんに「鬼」になるよう命じられた息子は、両手で顔を覆って、「もぉいいかぁい」と言いました。
「まぁだだよぉ」という声の代わりに、四人の男の子たちは息子めがけて一斉に石を投げつけたのです。
一月八日、父の故郷(わたしの本籍地でもある)慶尚南道山清郡に、父の父母、祖父母、曽祖父母、父の二人の兄のお墓参りをしてきました。
智異山が近いせいか、足踏みをしないと立っていられないくらいの寒さで、山も道も墓も雪で真っ白でした。
いま、ソウル・フラワー・ユニオンのニューアルバム『キャンプ・パンゲア』を聴いています。一番好きなのは、「死んだあのコ」という曲です。
辛くなると、アリランを聴く。
眠れない夜に自宅のベッドで聴くことが多いのだけれど、ウォークマンを持ち歩き、移動中の乗り物でも、缶詰中のホテルや旅館でも聴いています。
祖国――、わたしの国籍は大韓民国ですが、わたしの家族が日本に渡ってきたとき、祖国はひとつだったわけだから、わたしは大韓民国、朝鮮民主主義人民共和国のどちらも「ウリナラ」だと思っています。
息子が「ウリナラ」を訪れるのは、今回で二度目になります。
伊藤孝司さんの初監督作品「ヒロシマ・ピョンヤン」を観てきました。補償や治療など日本政府からの援護措置を受けられない「在朝被爆者」を描いたドキュメンタリーです。
夏は、なんといっても平壌冷麺ですね。二年前から平壌冷麺に取り憑かれ、最近では夢のなかにまで出現して、歯ごたえのある麺を噛み、コクがあるのにサッパリしているあの魅惑のスープを一滴残らず飲み干す有様なのです。
朝鮮人であるわたしに与えられたテーマは「民族詩をめぐって」で、万葉仮名の原典「郷歌(향가)」と、朝鮮固有の定型詩「時調(시조)」について語るというものでした。
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